iPhoneが私たちの生活に深く根ざした今、ユーザーインターフェース(UI)の快適性は、単なるデザインの話にとどまらず、日常的な「使いやすさ」や「ストレス軽減」に直結しています。その中でも、片手操作時における親指の動きと届く範囲に注目した「親指ゾーンマップ」は、UI設計において非常に重要です。

片手持ちにおける親指の「自然な動き」とは?
iPhoneを片手で持ったとき、人差し指や小指で支えながら、親指のみを使って操作するのが一般的です。このとき、親指は自然と「弧」を描くように動きます。つまり、直線的に上から下、あるいは横にスワイプするよりも、斜め方向、特に下部から中心にかけての曲線的な動作が得意です。
この動作パターンに基づき、画面上には「楽に届くゾーン」「やや努力が必要なゾーン」「届きにくいゾーン」という3つの領域が存在します。いわばヒートマップのような感覚で、この「親指ゾーンマップ」を使えば、タップやスワイプといったアクションにおける快適さを定量的に把握できます。
6.3インチの画面サイズで考える
一般的なスマートフォン(たとえば6.3インチ前後のiPhone)を片手で操作する場合を想定すると、画面の下から中央やや下にかけてが「もっとも快適にアクセスできるゾーン」です。
- アクションボタンやナビゲーションは下部に配置
- 上部メニューはスクロールやジェスチャーでアクセス可能に
- 重要度の低い要素は“努力ゾーン”に置いてもよい
「months」のUI設計
実際にこの親指ゾーンマップを意識してデザインされた「months」では、片手持ち操作を前提に、カレンダー操作や予定の追加といったアクションボタンが“楽に届くゾーン”に配置されており、ユーザーのスムーズな操作を支援しています。細かなインタラクション設計も、親指の動きの自然さに合わせて「やや努力が必要なゾーン」の中で操作が完結できるよう設計されています。

予定の詳細画面(予定追加画面)や検索画面などは届かないエリアに「画面を閉じる」ためのタップエリア(画面上部の横長のライン)がありますが、これは画面を下にフリックすることで同様の操作ができるようになっています。指が届きにくい位置にある項目もなるべくタップできるエリアを大きくし操作のしやすさが考えられています。
最後に:個人差への配慮も忘れずに
もちろん、親指ゾーンマップはあくまで「一般的な指標」です。手の大きさ、右利き・左利き、スマホの機種やケースの厚みなど、さまざまな要因によって「使いやすさ」は変わります。したがって、最適化されたUIとは、画一的な答えではなく、できるだけ多くの人にとって“自然に使える”感覚を意識して設計されたものであるべきです。